インターンシップを取り巻く不景気
大学卒業生にとって、インターンシップは選択肢のひとつにしかすぎません。しかし、就職活動に他の選択肢はないのかもしれません。決められた方向へしか進めないのは、前代未聞の金融危機があるからです。
2008年の卒業生の8%は、卒業してから6ヶ月後も就職していなかったという記録があります。昨年のこの数字は44%にまで上昇しました。
この12ヶ月間、状況はさらに悪化しています。18歳から24歳の大卒生の間にも無職が増えているのです。10人に1人が仕事を得られず、仮に仕事を得たとしても、自分の希望の分野や、今まで学校で学んできた分野とは無関係の分野になっているということです。
今年の卒業生の就職状況に関する見解も、概ね同じで、冷え込みは厳しくなっています。例え求人枠に空きがあっても、第二新卒によって埋め尽くされてしまうと、専門家は警告しています。現在学生が直面してる就職難は、現在の景気悪化が、過去のものとは違う形で雇用問題に影響をもたらしているからだと言うのです。
現代の就職難は昔と少し違う
例えば80年代や90年代、産業労働者たちも厳しい就職難を乗り越えています。仕事を求める大学卒業生があぶれたのは同じですが、この時は、雇用側が求人を減らす選択をしたからこそ、就職難が起きていました。
一方現代はどうでしょう?PricewaterhouseCoopersといえば、イギリスに拠点を置き、毎年たくさんの求人を出すことで知られる大手企業です。昨年、この企業の1000人の求人枠に、2万人を越える学生が応募しました。泣く子も黙るマイクロソフトに至っては、予定より早く募集を切り上げる対策をとらざるを得ませんでした。25人の求人に、5000を越える募集が殺到したからです。
トニーブレア元首相の誰にでもひらけた大学のユートピア的構想は、2009年のイギリスで、過去最大級の40万人の大卒生を誕生させました。この就職難以前なら簡単に就職できていた人たちも、学歴の弱点を克服すべく、大学へと進学したのです。
今では形式だけの「soft(優しい)」と表現される学位がありふれています。仮に経済が浮上したとしても、この学位に対する疑問は残ることでしょう。例えば、不景気の時代には、メディア研究のような大学のコースに学生が集中します。そのようなコースと、航空技術のような一般的に堅いとされているコースの学生数が5対1になることも珍しくありません。
学生は高校卒業時に、大学の学位があればもっと良い仕事に就けると説得されます。そしてこの数字が物語る事態へと繋がるのです。「私が大学を出たのは、より良い就職をするためで、ただ働きするためじゃないのよ。」と、22歳のハリエットさんも話しています。
イギリス政府曰く、人の一生と平均所得から考えれば、学位には40万ポンドの価値があるそうです。例えこの不況の前であったとしても、この数字に説得力があるとは考えられません。どこの大学の学位なのかという検討の余地はもちろん、どんな分野の学位なのかと言うことも、この数字を大きく変化させます。数学が様々な職種で優位になることは確かですが、芸術の学位を例にとれば、22,000ポンドぐらいの価値にしかなりません。
イギリスの学生が大学の学費のために抱える借金の平均額はおよそ15,700ポンドです。この数字ももちろん、上記計算の中で考慮されるべきです。この平均的な数字で計算すれば、借金返済にはおよそ11年かかることになります。こう考えれば、学生の間で抱かれている学位のイメージがどれだけ幻想であるかわかるでしょう。つまり、学位はそれだけで絶対的な効力を発揮しません。
修士号取得後、ロンドンのアートギャラリーへ勤めだしたマークさんは、実際にこの事実を自分が置かれた状況から学びました。
「芸術の世界で食べていくと決めたから、どんな仕事でも空きがあれば応募した。」
と、マークさんは語ります。
「だけど、しばらくして、八方塞がりになってるって気付いたよ。まわりの友達はみんなインターンシップをやってる。だからそれしか選択肢がないように見えた。負けじと30くらいのインターンシップに応募したよ。アートギャラリーから返事があったとき、俺ってすんごいラッキーだって思った。」
イギリスのインターンシップの実態
アメリカではインターンシップが一般的になってからしばらく経ちますが、イギリスでインターンシップがこれほど重要になったのはここ最近の話です。彼らが今実践していることは、移動祝祭日の1部です。
通常、インターンは1週間から3ヶ月続き、実際の就業経験を積むことで、就職に繋がるチャンスを掴むことができます。以前までなら、インターンシップは卒業前の大学生が夏の長期休暇を利用して行うものでした。インターンシップを通じてビジネスの実態を知り、人脈を築くことができます。だからこそ、インターンシップは有益なものでした。
とはいえ、現代のインターンと言えば、未だに仕事に就くことができないマークさんのように、大学を卒業した一人前の社会人がほとんどとなっています。そして、就職には、ただ働きのインターンしか道がないとみんな感じているのです。

The slave labour graduates: Cynical firms are forcing thousands of high flyers to work for nothing - or even making them pay for the
privilege
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1255323/The-slave-labour-graduates-Cynical-firms-forcing-thousands-high-flyers-work--making-pay-privilege.html